貧血に関連する栄養素は鉄、ビタミンB群、タンパク質です。(葉酸、ビオチン 、ナイアシンもB群)
厚生労働省の食事摂取基準に基づいた1日にとりたい栄養素の量は以下のとおりです。
(文部科学省の日本食品標準成分表2020年版を参照)
※デフォルトは成人男性の基準です。個人にあった量は登録することで表示できます。
鉄不足の解消のためにはタンパク質も積極的に摂る必要があります。
貧血といえば鉄不足を連想しますよね。
そのため鉄を積極的にとる人も少なくありませんがより正確には"身体へ貯蔵できる鉄の量(フェリチン値)"が不足している状態が貧血となります。
身体へ貯蔵できる鉄とは、鉄とタンパク質が結びついたフェリチンと呼ばれるものです。
足りなくなったら口座からお金を引き落とすように身体の中でも鉄が必要になったらフェリチンの鉄分を放出して鉄分を調整します。
フェリチンは内部に鉄を蓄えることができるタンパク質で、肝細胞などを中心として全身に分布しています。血液中の鉄分が不足すると、フェリチンに蓄えていた鉄分が放出され、血液中の鉄分量を調整します。ですから、ヘモグロビン値が正常でもフェリチン値が低下していれば、鉄の貯金が減っていることになり、鉄不足の症状が出ます。このことをお金にたとえて、ふだん使う財布のお金をヘモグロビン、貯金分をフェリチンということもあります。つまり、貯金分まで含めないと、本当の家計の状態はわからない、ということです。
藤川 徳美. うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる! (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1157-1162). Kindle 版.
どの程度の鉄分不足なのかは血液検査でフェリチン値を測ることで数値化もできます。
栄養療法でたくさんの患者の精神病の回復に成功させてきた藤川 徳美先生いわくフェリチン値30以下の人は重度の鉄不足だそうです。
鉄を食材からとるなら肉から取った方が効率的です。
肉(ヘム鉄)と植物(非ヘム鉄)を比べるとおよそ4〜5倍の吸収率の差があります(参照:オーソモレキュラー栄養医学研究所 - 鉄)
これは肉の場合は鉄がタンパク質と最初からくっついているためです。
植物の場合はタンパク質と結合する工程が必要になりその分だけ吸収効率が落ちてしまいます。
赤血球はタンパク質からできているためタンパク質はマストになります。
他に、鉄、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンCなどが材料として使われます。
実際に赤血球の産生の不足として問題となるのはビタミンB12と葉酸だそうなのでこれらを特に意識的にとると良いでしょう。(参照:鉄と貧血 - 埼玉医療大学 国際医療センター造血器腫瘍科)
細胞の中にあるミトコンドリアではATPと呼ばれる元気の源となるエネルギー産生が行われています。
(実際のエネルギーの使われ方はATPを必要なタイミングで分解させることでエネルギーを取り出している)
エネルギーとなるATPはいくつもの化学反応をおこして結果としてATPが産生されますが、その工程における最後の段階で鉄が使われてATPを産生することができます。(生化学の用語でいうところの鉄は電子伝達系の補因子)
ちなみに鉄の他にマンガンも外へ運ぶために使われるため余裕があればとっておくと良いです。
つまりせっかく身体の中で元気の源となるエネルギーをつくったとしても鉄がないと外へ運びだせないので使えないということになります。
エネルギーがなければ元気が出ないことは当然であるように貧血気味の女性が元気がなくなってしまうのは当然のことになります。「そんな時は甘いものを食べて癒されたいな」と考える方も少なくないと思います。
しかし糖質(グルコース)だけでATPは補給できますがエネルギー産生の効率がとても落ちてしまいます。
具体的には最大で17倍ほど効率が異なります。
加えて糖質をとりすぎるとインスリンを大量に出してくれる膵臓へ負担をかけます(加えて糖質を分解するために必要な栄養素も消費されていく)。
鉄と一緒にとっておきたいのはビタミンB群です。
ビタミンB群(クエン酸回路で補酵素となるもの)がないとATPを産生するための化学反応をおこすことができません。
鉄を十分に補給できたとしてエネルギー産生がそもそもできていないと元気になれません。
なお、エネルギー産生においてビタミンCも使われるので余裕があれば一緒にとっておきましょう。
ビタミンEは鉄の吸収率を下げると言われています。そのため消化後まで感覚をおいてからとると良いです(8時間の感覚をおく)
したがってサプリメントで鉄剤やビタミンEをとるような人は朝と晩とでとるタイミングを分ける工夫をした方が効率が良いといえます。
ちなみにヘム鉄よりキレート剤(国内では製造できていない)の方が効率が良いです。
食材から完全にビタミンEと鉄をわけてとるのは難しいため、鉄が特に多い食べ物、例えばレバーを食べる際には特にビタミンE含有量の多いアーモンドやあゆといった食べ物はさける。くらいは分けておくと良いでしょう。
鉄欠乏性貧血→もっとも多い貧血。食生活の乱れや一時的に鉄の必要量が大きいタイミングなどから生じる
再生不良性貧血→骨髄が赤血球や白血球を作らなくなって起こる
悪性貧血→ビタミンB12が欠乏することで生じる
溶血性貧血→赤血球の膜が壊れることで生じる。スポーツ選手によく見られる
ひどい場合、原因がわからない場合は病院でチェックしてもらいましょう。
上の食材リストには食事摂取基準に定められた量に基づいて食材を表示しています。
しかし遺伝子によって栄養素の摂取効率はことなるため必ずしも食事摂取基準の量だけ取れば良いということにはならないことには注意が必要です。
分子栄養学(分子生物学に基づいた栄養学)ではそうした個人差を考慮することで食事ではとることが難しい量が必要となります。
分子栄養学の視点から栄養素をとる場合はサプリメントに頼る必要があります。